裂肛[れっこう](切れ痔・裂け痔)

裂肛の治療法

多くの裂肛が生活習慣の改善や薬剤の投与などで治ります。したがって、第一選択は、これらの保存療法ということになります。保存療法のポイントは、便秘と下痢を治すことと、炎症を抑えることです。

生活習慣の改善により便通異常を治す

裂肛の最大の原因は、痔核同様、便秘です。植物繊維やビフィズス菌を積極的にとり、無理なダイエットなどはしてはいけません。

日ごろから食生活に気をつけていれば、便秘になる心配もなく、裂肛になるリスクも十分減らせるというわけです。

もし、3日以上便秘がつづいたなら、転ばぬ先の杖で、消化器内科医にかかってみてはいかがでしょうか。便秘改善の生活指導などが受けられ、それが裂肛の予防にもなるはずです。

便秘によって起こる病気でもっとも多いのが、痔です。便秘が続いたら、やがては痔になることが避けられないと考えたほうが賢明です。便通をととのえるための生活改善は、「痔主」の人にとって、生涯にわたって行うべき注意です。

保存療法で用いる薬剤は内痔核の薬剤とほぼ同じ

長期間下痢をともなう裂肛の場合、内科医で下痢の原因を調べてもらい、その治療を行わなければなりません。便秘をともなう裂肛の場合は、下剤や軟便剤を用います。薬の種類は内痔核(168ページ参照)と同様です。

炎症を抑えるためには消炎薬を用います。経口薬、坐薬、軟膏がありますが、これも内痔核に準じます。

ジェンセンは、急性裂肛の患者さん103人を対象に、①非ステロイド性消炎薬のリドカイン軟膏、②ステロイド性消炎薬のヒドロコルチゾン軟膏、③ふすま摂取と座浴、という3つの方法で治療し、3週間後に治療成績を比較検討しています。その報告によると、治癒率は①60%、②82.4%、③87%ということでした。

この報告からわかることは、薬を使う場合も、生活習慣を改善して便通をととのえることが大切だということです。

肛門括約筋の緊張をとる薬物療法の試み

裂肛は、内肛門括約筋が過度に緊張して起こる、という考え方から、裂肛の治療では、内肛門括約筋の緊張をとるために切開する方法が行われていますが、括約筋の緊張を取る次のような薬剤も試みられています。

たとえば、「ニトログリセリン軟膏療法」は、ニトログリセリンに含まれている神経伝達物質の酸化窒素が、内肛門括約筋を弛緩させる効果を期待して行われています。しかし、副作用として激しい頭痛が起こり、その頭痛の激しさは裂肛の痛みの比ではないという報告も多く、最近ではこの治療法を見直す方向にあります。

筋肉の不全マヒを起こすボツリヌス毒素を内・外肛門括約筋に注入し、括約筋の緊張をとろうとする(ボツリヌス毒素注入療法)は食中毒を起こす物質であり、日本ではほとんど行われていません。

また、血管拡張剤のニフェジピンを内肛門括約筋の弛緩に使用できないか、という試みがありますが、効果的な薬は誕生していません。