痔の種類と症状

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痔瘻[じろう](あな痔)

痔瘻の原因と発症の仕方

痔瘻は、肛門腺にうみがたまり、瘻管という管ができて、うみが出る病気です。たいていは「肛門周囲膿瘍」という病気から進行することが多く、激しい痛みや発熱をともないます。

痔瘻の治療は、自宅療法や薬では治りにくく、肛門がんになることもあるので、手術をするしかありません。

歯状線上の小さなあなから便が入り込んで感染

肛門の歯状線には、肛門腺窩という小さなポケット状のあなが全部で8~11個あります。そこには、肛門腺から肛門導管という管が開口しています。

肛門腺は内肛門括約筋と外肛門括約筋の間にあります。この存在については、かつて、ほかの哺乳類と同じように発情期に分泌物を出して異性を誘ったとか、肛門管内の免疫に関係していたなどという説がありますが、よくわかっていません。いずれにしても、現在の私たちにも肛門腺があり、脂質と粘液を分泌しています。

肛門腺窩は便の通過するところにあるあななので、排便時には便がこの中に入ってしまうことがありますが、肛門には細菌に対する強い免疫力があり、通常は炎症を起こすことはありません。

ところが、便秘になってトイレでいきんだり、ひどい下痢で大量の水様便が勢いよく出ると、便が肛門腺窩から肛門腺に押し込まれます。そのときに、ストレスや疲労が重なって肛門の免疫力が落ちていると、便に含まれている細菌の感染を防げずに炎症を起こし、肛門腺が化膿することがあります。

慢性の下痢も裂肛の原因に

肛門腺が化膿すると、たまったうみが圧力の少ない部分を浸食していきながら、1本の道となって外に流れ出ていきます。うみが流れ出る出口となるのはほとんど皮膚ですが、まれには粘膜の場合もあります。

細菌が侵入した肛門腺窩を原発口(一次口)、初発感染した肛門腺を原発巣、うみの出口(瘻孔)を二次口といいます。このように1本の管、うみのトンネルを形成するのが痔瘻です。このトンネルを瘻管といいますが、瘻管の太さは一定ではありません。原発口から原発巣までは細かく、管の壁も薄いのが普通です。しかし、原発巣は膿瘍(うみがたまったところ)を形成したところで、かたい壁でおおわれ、中に病的肉芽(傷や炎症のあとにできる粒状の結合組織)を含む比較的大きめの球体を形成しています。そして、原発巣から二次口まではかたくてかなり太い管となります。

痔瘻と診断されると100%手術となる

肛門腺の細菌感染によってできたうみがお尻の皮膚のほうへむかって進んでいくとき、多くの場合、肛門の周囲の皮膚が赤くはれ上がってズキズキと痛み、熱が出ることもあります。これを「肛門周囲膿瘍」といいます。

肛門周囲膿瘍の段階で切開してうみを出せば、症状は治ります。しかし、痔瘻になってしまうと、うみを取り除くだけでは不十分で、原発口である肛門腺窩を手術によって取り除かないと再発します。

さらに、痔瘻を長年にわたってほうっておくと、化膿をくり返し、痔瘻のトンネルが何本も枝分かれして、まれにがん化することがあります。がん化を防ぐ意味でも手術は必要です。

痔瘻になりやすい人 痔瘻になりやすい部位

痔瘻がどのくらいの割合で、どのような人に発生するのかなどのくわしい統計はありません。ただ、平田病院の患者さん全体に占める痔瘻の患者さんの割合は、男性では13%、女性では3%で、男性は内痔核に次ぐ2番目の痔となっています。男女比は8対1で男性に多く、年齢を見ると、男性では20~40代、女性では30代に多く発生しています。男女を通して、高齢者には少ないのも特徴の一つです。

これらのことから、痔瘻になりやすいのは青年期から中年期の男性といえます。 昔は、痔瘻は結核菌が起こす結核性の病気と考えられていましたが、現在では、便の中の大腸菌などの細菌に感染して起こるものが大半といわれています。

青年期から中年期の男性は筋肉が発達していて、いきむ力が強いので、勢いよく排便され、便が肛門腺窩に入り込む可能性が高いからだと考えられます。

アルコールを飲む人に痔瘻が多いのも、アルコールのために下痢になりやすいからだと思われます。飲酒の量はほどほどにすることや、連日の飲酒は控えることは、痔瘻の予防とともに、全身の健康管理としても大切です。

また、免疫力が低下していると、膿瘍を形成しやすい状態になります。過労におちいらないように仕事量をコントロールすること、ストレスをじょうずに解消すること、かぜをひいたときは無理しないで早めに治すことなども、肛門周囲膿瘍を予防するうえで大切なことです。

痔瘻の原発口は、8~11個の肛門腺窩が歯状線の全周にほぼ均等にあるので、全周に均等に発生しそうなものですが、肛門の背中側に多く発生します。その理由としては、直腸肛門管の構造から、排便のときに便が後方に強くぶつかるからだと考えられます。

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