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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#014「排便時に出血!自分で治せる?」

自己診断は無理、医師の診察を

視聴者様から質問のメールをいただきました。「最近、排便時にトイレットペーパーに血が着くことがあります。痛みやかゆみはありません。これは、痔の初期症状でしょうか。肛門科へ行かずに自己診断する方法はありますか?」(50代・男性)
結論から申しますと、診察をしない限り、出血の原因はわかりません。肛門から出血する一番の原因は、腸からの出血です。腸の病気、例えばがんであっても少量の出血はあります。二番目は、肛門に炎症があり、粘膜が切れることで出血する場合です。この痔による出血が大多数ですが、がんなどの腸疾患による出血も少なくありません。
世界では、40歳を超えたら2年に一度は大腸の内視鏡検査を受けましょう、という運動が行われています。質問を送ってくださった方は50代ですから、最低でも2年に一度は内視鏡検査を受けて、癌の有無を調べておけば、もし出血があっても腸の病気ではないという安心感も得られます。
最近、私の病院に限った話ですが、30人の患者さんに内視鏡検査をしたら、3人の方が大腸がんと診断されました。これは何らかの症状が出たために検査を受けた方の場合であり、検診ではありませんから、5年前に比較してもがんと診断されるケースが非常に増えてきているのは確かです。

肛門に炎症が起こる理由

肛門は、毎日便が通過します。肛門の粘膜には汚い便が触れるわけですから、炎症を起こしやすくなるのは当然ともいえます。肛門の粘膜だからといって、特別厚く頑丈なわけではなく、目の粘膜とそれほど変わらない厚さです。ではなぜ普段は炎症を起こさないかというと、「局所免疫」が汚れから粘膜を守り、炎症を抑えているからです。ところが疲労などでこの免疫力が下がると、抵抗力が弱まり、炎症を起こしやすくなります。
しかし炎症を起こしても、肛門粘膜には神経がないので痛みを感じませんから、炎症に気づかないまま深夜まで仕事をしたり、硬い便やひどい下痢などをすると、ただれた粘膜が切れ、出血へつながるのです。
このとき、例えば一週間。毎日8時間睡眠をとり、お酒を控え、座ったままではなく時々立って歩くなどの生活習慣を改善してみて、出血が止まるようであれば、肛門の炎症による出血であった可能性が高いといえるでしょう。ですので、まずは一週間生活習慣を変えて様子を見て、それでも出血が止まらないようであれば専門医の診断を仰ぐべきです。

肛門のかゆみの原因が直腸がんだったケースも

そして「かゆみ」の原因ですが、これは炎症を起こすことで分泌物が出て、皮膚がただれることによって起こります。かゆみがあるということは、肛門内に炎症があり、そのままにしているのではないか、と考えられるわけです。
当院の例で、50代後半の男性が、肛門のかゆみがあるということで受診されて、塗り薬を処方して治療しましたが、かゆみが治まりませんでした。詳しく検査したところ、直腸がんであることが判明し、この患部からの分泌物のせいでかゆみが起きていました。このように、かゆみだけでも、直腸がんの兆候である可能性も否定できません。
一週間ほど様子を見て症状が変わらないようであれば、必ず専門医の診断を受けてください。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。