2-1 裂肛の原因と発症の仕方
裂肛は、いわば肛門の外傷で、かたい便が肛門から出るときに歯状線より外側の肛門上皮が切れて裂け、激しく痛んだり出血したりする痔です。切れ痔、裂け痔と呼ぶこともあります。便秘のために強くいきんで排便すると発生しやすい
裂肛ができる部位は歯状線より下の肛門上皮です。ここは、皮膚と同じ組織で弾力性がなく、血流もあまり多くないため、ちょっとした刺激でも切れたり炎症を起こしやすいのです。裂肛の最大の原因は痔核と同様、便秘です。便秘になると、便がかたくなるので、スムーズに排便できません。いきおい強い腹圧をかけて、無理に押し出そうとします。かたい便が無理に肛門を通過するので、歯状線の外側の肛門上皮が耐えきれなくなり、裂けてしまい、ピリッと痛みが走ります。
裂肛は、どちらかというと女性に多い痔です。便秘や出産のときに腹圧をかけすぎることが関係しています。

慢性の下痢も裂肛の原因に
下痢便も裂肛の原因となります。水分の多い便は肛門粘膜に浸透して炎症を起こしやすいので、粘膜を弱くします。特に、慢性の下痢症になると、肛門上皮は常に水様の便にさらされ、粘膜もダメージを受けつづけます。そのため、便が通るときにこすられると、すぐに切れて裂肛になるのです。内肛門括約筋が緊張すると裂肛をまねきやすい
裂肛は、肛門管の背中側によくできます。これは、直腸からおりてくる便が肛門の背中側にぶつかるために傷つきやすいことと、また、肛門の背中側は血流が少ないので、炎症を起こしやすい、などの原因があげられます。肛門の内圧を測定すると、裂肛の患者さんの場合は、内肛門括約筋が緊張して肛門内圧静止圧が高くなっており、さらに肛門上皮の周辺の血流が少なくなっていることがわかります。肛門上皮に行く血管は内肛門括約筋の中を垂直に通っているために、内肛門括約筋が緊張すると血管が締めつけられ、肛門上皮への血流が低下するのです。その結果、肛門の粘膜が虚血状態と成り、裂肛をまねきやすくしていると考えられます。
また、内痔核(いぼ痔)を合併していることが多いのですが、これは、内痔核が脱出するときの物理的刺激により、肛門上皮が傷つくためです。

【関連ページ】
▶1. 痔核[じかく](いぼ痔)
▶2. 裂肛[れっこう](切れ痔・裂け痔)
▶2-1.裂肛の原因と発症の仕方
▶2-2.裂肛の症状と3つのタイプ
▶2-3.肛門狭窄[きょうさく]
▶2-4.裂肛の治療法
▶2-5.裂肛の手術
▶3. 痔瘻[じろう](あな痔)
▶「痔の種類と症状」のページへ戻る
▶平田肛門科医院トップページへ戻る