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おしりの医学#039「痔瘻の初期症状は?」

お尻の病気の中でも良く知られている痔瘻ですが、初期段階ではほとんど症状がないのをご存じでしょうか?痔瘻は患部が炎症を起こし、腫れや痛みを感じるようになるまでは発見が困難です。かといって長く放置してしまうと、がんなどの深刻な病気に発展してしまう可能性があるため、注意が必要です。今回は痔瘻の初期症状について解説していきます。

初期の痔瘻には症状がないことが多い

痔瘻とは直腸と肛門の間の歯状線に存在する肛門陰窩と呼ばれるくぼみに細菌が入り、直腸から肛門周囲の皮膚に亘って炎症を起こしてしまう病気です。進行すると肛門陰窩から肛門周辺に皮膚に亘って穴が開いてしまうのが特徴です。
強い痛みの他、時には高熱がでることもある痔瘻ですが、実は初期段階ではほとんど症状がなく、病状が進行するまで気が付かないことが多いです。よって、初期の段階で発見することは難しいといえます。痔瘻が徐々に進行してくると炎症によって膿が貯まり、肛門周囲膿瘍という腫れが出てきます。
肛門周囲膿瘍が破れ、中から膿が排出されるようになると直腸との穴が開き、痔瘻となります。肛門の周辺に痛みを伴う腫れがある場合は痔瘻が進行している可能性があるので、専門医の診察を受けることをおすすめします。

痔瘻の悪化はがんに繋がる可能性がある

痔瘻の症状が出ていたり、肛門の周囲に腫れがある場合は早めに専門医の診察を受けることが重要です。痔瘻は長年にわたって放置すると穴がどんどん枝分かれし、さらに悪化する可能性があります。また、痔瘻からがんに発展する可能性もあるため、痔瘻を放置するのは大変危険です。

初期の痔瘻は見分けづらいので注意

先述の通り、痔瘻は肛門周囲膿瘍が進行することで発症します。しかし、肛門周囲膿瘍は肛門陰窩細菌が入って発症するものだけでなく、肛門付近の毛穴の奥にある毛包が炎症を起こす毛包炎によって発症することも多いです。
よって、初期の痔瘻の見極めは難しく、明らかに痔瘻と判断できない場合は定期的に治療をしつつ、経過を観察することになります。痔瘻であることが確定するまで手術を行うことはないため、悪化する前に治療を受けることで身体への負担を抑えることが可能です。

痔瘻の予兆を感じたらなるべく早く診察を受けよう

初期の痔瘻にはほとんど症状がないため、異常を感じる頃にはある程度症状が進行していることが多いです。また、痔瘻に進行する肛門周囲膿瘍は毛包炎によってできた腫れと見分けがつきづらいため、痔瘻と判断できるまでは経過を見る必要があります。
痔瘻を長年放置すると穴が枝分かれして患部が広がるだけでなく、最悪の場合がんに発展することもあります。肛門の腫れや痛みなど、痔瘻の予兆を感じたら、なるべく早く専門医の診察を受けることをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。