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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#042「 痔とセックス(アナルセックス)」

痔があるときに性交渉をしても良いのか、気になっている人も少なくないでしょう。結論から言えば普通の性交渉であれば問題ありませんが、肛門性交は避けたほうが良いです。また、そもそも肛門性交は様々な危険を伴うので、しっかりと理解をしておく必要があります。今回は痔と性交渉について解説していきます。

痔がある時の肛門性交は危険

痔がある時でも一般的な性交渉をする分には問題ありません。ただし、痔が急性炎症期で、痛みや出血がある時は避けるべきです。性交渉中に痛みがひどくなることがある他、出血が悪化する可能性があります。
また、痔がある時に肛門性交をするのは止めておきましょう。肛門性交は痔の症状を悪化させ、出血が止まらなくなったりする可能性が高いです。痔ではなくても肛門周囲膿瘍がある場合は、膿瘍が破れて膿が出てくることがあります。
当院に来院した患者さんの中にも、痔の手術から2週間程度経った後に肛門での性交を行い、出血が止まらなくなったという人がいました。

肛門性交の危険性

おしりの医学#026「アナルセックス(肛門性交)の危険性」』でも解説していますが、痔がなかったとしても肛門性交には危険が伴います。肛門は精密な感覚器官を持っている部位です。無理な使い方をしてしまうと感覚器官に異常を来たし、正常な機能を発揮できなくなる可能性があります。
また、肛門性交は肛門にできるがんの原因になることが分かっています。肛門は皮膚と同じ上皮組織と、腸などと同じ粘膜組織が共存している部位です。よって、皮膚にできる「扁平上皮がん」と粘膜組織にできる「腺がん」の両方になるリスクがあります。加えて、痔瘻が進行して発生する「痔瘻がん」も肛門にできるがんの1つです。
扁平上皮がんが発生する原因はヒトパピローマウィルスであると言われています。ヒトパピローマウィルスは性交渉によって感染し、子宮頸がんなどの原因にもなっているウィルスです。肛門性交をするとヒトパピローマウィルスが肛門に感染し、肛門の扁平上皮がんが発生する可能性があります。
以上のようなリスクがあるので、肛門性交には危険が伴うことをよく理解しておくことが重要です。

痛みを感じる時はできるだけ安静にしよう

性交渉は痔を悪化させる可能性があります。痛みや出血がないのであれば通常の性交渉は問題ありませんが、そういった症状がある場合は避けておいた方が良いでしょう。また、痔がある時の肛門性交は痔の症状をさらに悪化させてしまう可能性が高いため、基本的にはやめておくべきです。
また、肛門性交は痔の悪化だけでなく、肛門の感覚器官に異常をきたしたり、がんの原因になったりします。肛門性交をする前に、リスクをしっかりと理解しておきましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。