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おしりの医学#045「痔と大腸がん(直腸がん)は見分けられる?」

痔と大腸がん(直腸がん)には、血便が出ることがあるという共通点があります。双方ともに重症化すると大きな問題になる病気ですが、特にがんについては進行すると命に関わる可能性が高いため、早期の発見が重要です。今回は痔と大腸がん(直腸がん)は見分けられるのかについてお話ししていきます。

血便の状態で痔と大腸がん(直腸がん)を見分けるのは難しい

現状、痔と大腸がん(直腸がん)を明確に見分けるのは難しいとされています。痔とがんの共通点としては血便がありますが、当院で世界の300例以上の症例を独自に確認したところ、結論として明確にどちらかに判断できたという例は出てきませんでした。

血便以外の観点である程度の判断をすることは可能

血便の状態から痔とがんを見分けるのは困難ですが、血便以外の症状からはある程度判別が可能です。例えば、痔の場合は肛門に強い痛みがあることが多いです。痔核や直腸粘膜脱などの場合は肛門に鈍い痛みがあるものの、出血することはないためがんとの見分けが尽きます。裂肛(切れ痔)の場合は排便時に出血を伴いますが、同時に肛門に強い痛みを感じるため、がんではないと判断が可能です。
また、大腸がん(直腸がん)の場合は血便の他に、腹部の膨満感や頻便、体重減少や貧血など、痔にはない症状が見られるため、血便の原因が痔ではない可能性があると判断できます。いずれにせよ、血便が出た際にはできるだけ早く医師の診察を受けた方が、大事にならずに済む可能性が高いです。

大腸がん(直腸がん)の早期発見には大腸検査が有効

上記でも述べた通り、痔と大腸がん(直腸がん)を血便の状態で判断するのは難しいです。他の症状には違いがありますが、症状には個人差があるため、人によっては判断が遅れてしまう可能性もあります。可能な限り大腸がん(直腸がん)を早期に発見したいのであれば、大腸内視鏡検査を定期的に受けるのがおすすめです。
『おしりの医学#038「血便が出たらどうする⁉」』でもお話ししていますが、アメリカやヨーロッパでは大腸や直腸の異常を早期発見するため、40歳以上の国民には2年に1回のペースでの大腸内視鏡検査を推奨しています。
定期的な大腸内視鏡検査は難しいとしても、血便をはじめとした異常を感じた際には、一度大腸内視鏡検査を受けてみることをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。