おしりの医学

HOME | 痔の治療に関するコラム | おしりの医学 | おしりの医学#049「肛門痛とは?」

Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#049「肛門痛とは?」

今回はYouTubeに公開中の「おしりの医学」の動画にいただいた質問コメントから、肛門痛についてお話ししていきます。肛門痛の原因には様々なものがあり、それぞれ治療法や対策が異なるので注意が必要です。痛みそのものについても理解を深め、適切な治療が行えるようにしていきましょう。

痛みの原因は大きく分けて3種類

肛門痛に限らず、痛みには大きく分けて3種類存在します。

  • 炎症や傷が原因の痛み
  • メンタルが原因の痛み
  • 神経の異常が原因する痛み

1つ目は炎症や傷が原因の痛みです。多くの人が経験上知っているように、皮膚や内臓の組織に炎症や外傷があると痛みが発生します。次にメンタルが原因の痛みです。メンタルが原因となっている場合は痛みがある部分に炎症や傷があるわけではなく、精神的な要因で痛みがあるように脳が勘違いします。 最後に神経の異常が原因の痛みです。神経が何かしらの要因で圧迫されたり傷つくと痛みを感じます。例えば、腰椎椎間板ヘルニアは神経が背骨に圧迫されることが原因で発生する病気です。
肛門の痛みには様々なバリエーションがありますが、基本的に以上の3種類の痛みに分類することができます。

炎症や傷が原因の肛門痛は生活習慣の改善で治療できる

炎症や傷が原因の肛門痛はいわゆる切れ痔が原因で発生します。切れ痔がある場合は特に排便時に鋭い痛みを感じ、出血を伴うことも多いです。切れ痔が原因の肛門痛であれば外用薬の処方と生活習慣の改善で治療できます。基本的に手術をする必要はありません。

メンタルが原因の肛門痛は心療内科との併診が必要

メンタルが原因の肛門痛の場合は痔が原因である可能性は低いです。仮に治療を行ったとしても痛みが身体の他の場所に移り、改善しないことがあります。メンタルが原因の肛門痛がある場合は肛門科で診察を受けるだけでなく、心療内科との併診が必要です。

神経の異常が原因の肛門痛は昼寝で軽減可能

神経の異常が原因の肛門痛は近年問題になりつつあります。切れ痔のような鋭い痛みではなく、座っている時に鈍い痛みがある場合、直腸を支えている組織が老化などによって弱くなっていることが原因であることが多いです。 老化によって直腸を支えているコラーゲンファイバーという組織が弱くなると、直腸が胃下垂のように落ちてきてしまいます。落ちてきた直腸によって骨盤付近に存在する陰部神経が圧迫されると、肛門付近に鈍い痛みが走るようになるのです。
神経が圧迫されることで発生する肛門痛は排便時に感じることは少なく、出血もありません。しかし、長時間座っていると痛みを感じるため、悪化すると日常生活に支障をきたすようになります。
先述の通り、上記の症状は老化が主な原因なので、治療は長期にわたります。日常生活で最も効果的な対策は昼寝です。直腸は心臓と肛門を同じ高さにすることで元の位置に戻ります。
一般的に陰部神経の圧迫による肛門痛が強くなることが多い14時~15時ごろに15分程度横になれば、一時的に直腸の位置が戻り、痛みを軽減することが可能です。肛門付近に鈍い痛みを感じるようであれば、日中に横になる時間を設けるようにしましょう。

肛門痛といっても痛みに合わせて対策を変えることが重要

一口に肛門痛といっても、痛みの原因は様々です。肛門痛をしっかりと治療したいのであれば、自身が抱えている痛みの種類を把握し、痛みに合った治療や対策を行うことが重要になります。 痛みの原因を正確に把握したいのであれば、自分で判断せず、医師の診察を受けるのがおすすめです。痛みに対して最適な治療を行い、早期の回復を目指しましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。