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おしりの医学#069「内痔核のレーザー治療〜入院期間が長く取れない方の手術方法」

当院では内痔核の治療方法として、生活習慣の改善による保存療法をメインとしていますが、症状によっては手術をすすめることもあります。手術というと基本的には外科的切除を行いますが、もう1つの選択肢として存在するのがレーザー治療です。今回は内痔核のレーザー治療について、概要やメリットをお話ししていきます。

内痔核のレーザー治療とは

レーザー治療とは名前の通り、レーザーを使用して行う治療方法です。レーザー治療は保険適用外の治療法であるため、現状日本で実施している病院は多くありません。当院では内痔核の治療法として、外科的切除と合わせてレーザーを使用することがあります。具体的な手順は以下の通りです。

  • 腰椎に麻酔を打ち、肛門を広げる
  • レーザーが効果を発揮するよう、患部奥側に蛍光色素を注入する
  • 粘膜が白くなるまでレーザーを照射する
  • 患部手前側を外科的切除する

まず、腰椎に麻酔を打ち、患部が露出するように肛門を広げます。次にレーザーの光が患部を効率的に攻撃できるよう、インドシアニングリーンという緑色の蛍光色素を、肛門から見て奥側、内痔核の上部に注入します。続いて、医療用レーザーで、粘膜が白くなるまで照射。最後に肛門から見て手前側の患部を切除して完了です。レーザーを照射することで、細胞は熱によってアポトーシス(細胞死)することになります。結果、内痔核が小さくなり、治療することが可能です。

レーザー治療と外科的切除を組み合わせる理由

上記の手順を見て、患部すべてをレーザーで治療するのではないかと疑問に思う方も多いでしょう。実は、肛門から見て手前側の痔を外科的切除するのには以下のような理由があります。

  • 皮垂や外痔核を完全に切除するため
  • アポトーシスした細胞の流出路をつくるため

まず、内痔核の症状がある方は、皮垂や外痔核が併発している場合があります。皮垂や外痔核は内痔核よりも残存しやすいため、レーザー治療だけでは完全に治療することができない可能性が高いです。よって、皮垂や外痔核については外科的切除を行い、内痔核にのみレーザー治療を行ったほうが、効果的な治療が可能になります。
また、レーザー治療を行うと細胞が熱によってアポトーシスを行いますが、アポトーシスした細胞は流出路がなければ患部に残存し、一過性の腫れを引き起こす可能性があります。外科的切除で肛門に近い部分を切除すれば、切除した跡がアポトーシスした細胞の流出路になるため、術後の腫れを抑えることが可能です。以上の理由から、当院ではレーザー治療に外科的切除を組み合わせています。

内痔核をレーザー治療で治すメリット

内痔核をレーザー治療で治す最大のメリットは、術後の疼痛が少ないことです。加えて、術後の出血も少ないため、早期の退院が可能になることも大きなメリットであるといえるでしょう。 当院では手術が必要な場合、基本的に6泊7日の入院期間を設けていますが、入院期間がとれない場合は、再入院の可能性があることや、退院後の安静が必要なことを理解いただいた場合に限り、1泊2日での手術を試行しております。
当院では2000年からレーザー治療を行っており、症例数は600を超えています。外科的切除の治療成績と比較すると、2例ほど再発し、再手術を認めている状況です。双方ともに術後4年を超えており、かつ最初の手術時に通常と比較して内痔核が巨大だったものとなっています。
つまり、通常の内痔核であれば現状再発の例がないということです。治療成績を見ると外科的切除に勝ることはありませんが、ほぼ遜色のない成績を納めているので、術後の身体への負担を考慮しても、充分選択肢に入る治療方法であるといえるでしょう。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。