おしりの医学

HOME | 痔の治療に関するコラム | おしりの医学 | おしりの医学#085「脱肛の自覚症状・手術の要不要について」

Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#085「脱肛の自覚症状・手術の要不要について」

今回はライブ配信でいただいた質問についてお話しします。「まだ脱肛を自覚して1ヶ月以内なのですが、午後には常に脱肛するようになっています。自作症状が出た時点でかなり悪いのでしょうか?」という質問をいただきました。そこで今回は、脱肛における手術の要不要について解説していきます。

脱肛の自覚は手術が必要になることもある

痔が大きくなってくると、夕方ごろに重力によって肛門周辺が重くなり、症状が重い場合は脱肛してしまうことがあります。もし頻繁に脱肛が起こり、自分で出てきた痔核を戻すことが多い場合、手術が必要になることもあるので注意が必要です。
現在の医学会では、肛門から出てきた痔を自分で戻すようになることが、手術を適用する基準となっています。ただし、必ずしも手術が必要になるとは限りません。当院の場合、まずは生活習慣の改善や薬の使用といった保存療法を行いながら3ヶ月ほど様子を見て、それでもなお症状が良くならない場合に手術を検討することになります。

実際に手術が必要になることは少ない

脱肛は手術の適用基準になっていますが、実際に手術が必要になることは少ないです。保存療法を適切に行うことで充分利用を行えます。学会発表では脱肛の症状がある383名に、生活指導と薬の処方を3ヶ月行ったところ、95%は脱肛の症状がなくなったとされています。
注意が必要なのは痔核の大きさが本来のものでない時に受診してしまった時です。痔核は本来小さかったとしても、炎症や血行不良によって大きくなることがあります。痔核が大きい時に医師の診察を受けると、手術を勧められる可能性が高くなってしまいます。
本当に手術が必要か判断するためには、一度痔核を本来の大きさに戻す必要があります。保存療法を行うことで炎症や血行不良を解消できるので、手術を勧められた方もまずは保存療法で様子を見るのがおすすめです。

脱肛の症状があったらまずは医師の診察を受けよう

脱肛は生活習慣の改善でも良くなる可能性がありますが、脱肛がある場合はひとまず専門医の診察を受けることをおすすめします。脱肛の原因は痔であることが多いですが、直腸がんが原因で起きていることもあります。痔が原因の脱肛であればしばらく様子を見ても問題ありませんが、直腸がんが原因の場合は早急に治療を行なわなければなりません。
適切な治療を行うためにはまず病名を特定する必要があります。脱肛の症状が見られるのであれば放置せず、まずは専門医の診察を受けるようにしましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)

1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。