Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#151「脱肛の手術方法は?〜症状のレベルに応じた対処法のいろいろ」
「脱肛の手術とはどういうものでしょうか?」
「単に痔の手術と同じですか?」
という視聴者さまからのご質問にお答えします。
脱肛とは?内痔核との違いは?
脱肛とは、排便時にいぼ痔(内痔核)が肛門の外に飛び出してしまう状態を指します。
元々、人間のお尻には血流の関係でいぼ痔ができやすい場所が3箇所ほど存在するのですが、これが病的に大きくなった状態を「内痔核」と呼びます。
生活習慣や排便時のいきみによって大きくなったり小さくなったりするのが特徴です。
多くの人が「内痔核は完治しないの?」「お薬はいつまで飲めばいいの?」と心配されますが、症状が落ち着いていればお薬を減らしたり中止したりすることも可能です。
そして「脱肛」は、この内痔核がさらに進行した状態と言えます。
脱肛の重症度分類(ゴリガー分類)
脱肛の進行度は「ゴリガー分類」で評価されます。特に重要なのは以下の2つです。
2度:排便時にいぼ痔が外に出るが、自然に戻る(指で押し込まなくてもOK)
3度:排便時に外に出てしまい、指で押し戻さないと戻らない
3度になると手術の適応となるケースが多くなります。ただし、3度と診断されても、生活習慣を改善することで2度に戻る患者さんも少なくありません。
まずは生活習慣の改善が最優先
脱肛や内痔核の治療で最も大切なのは、手術よりも先に生活習慣を見直すことです。
・便秘・下痢を改善する(食物繊維・水分を十分に)
・排便時にいきみすぎない
・長時間の座り仕事や同じ姿勢を避ける
・適度な運動を取り入れる
生活習慣が改善されなければ、仮に手術で切り取って一旦症状がおさまったとしても、また同じ場所、または別の場所に再発する可能性があります。「手術すれば完治」というわけではないことを理解しておきましょう。
脱肛の手術はどんな方法がある?
現在、一般的に行われている主な術式は以下の通りです。
・従来の外科的手術(結紮切除術など)
・注射療法(ALTA療法・ジオン療法)
・レーザー治療(半導体レーザー法)
それぞれ特徴が異なり、患者さんの症状や生活スタイルに合わせて選択されます。
従来の外科的手術の特徴と注意点
方法:下半身麻酔下で、いぼ痔を外科的に切除し、痔動脈を縫合して出血を防ぐ
<メリット>
・根治性が高い
<デメリット>
・入院が必要(約1週間)
・術後1週間程度は出血のリスクあり
・術後の痛みが強い場合がある
総じて、生活習慣が改善されている患者さんには、有効な選択肢と言えます。
注射療法(ALTA・ジオン療法)のメリット・デメリット
2005年に厚生労働省が承認し、50万例以上実施されている日帰り可能な治療法です。
<メリット>
・日帰り・短時間・比較的痛みが少ない
<デメリット>
・硫酸アルミニウムカリウムという物質を使用
・長期的な安全性について海外では未承認(20年以上経過しても認可なし)
・再発率が比較的高く、3年後には3割以上で再発するケースも
・繰り返し注射する場合は物質の蓄積が懸念される
当院では、安全性と再発率を考慮し、注射療法の施術は行っておりません。
当院が推奨する治療法
平田医院では以下の2つを主に推奨しています。
<半導体レーザー法(インドシアニングリーン併用)>
2000年から実施、500例以上の経験あり。有害事象は少なく、長期入院不可のケースにも対応可能。
<従来の外科的手術>
根治性を重視する場合に選択しています。
当院では、どちらのケースに於いても、基本的に生活習慣の改善を前提とした上で提案しています。入院が難しい方や、なるべく負担を抑えたい方には、レーザー法を有力な選択肢としてお勧めしております。
まとめ:自分に合った治療を選ぶ
脱肛は進行度や生活習慣によって治療法が変わります。
大切なポイントは以下の3つです。
・まずは専門医を受診し、正しい診断を受ける
・生活習慣の改善を並行して行う
・手術を選択する場合は、メリット・デメリットを十分理解する
自己判断での放置は大変危険です。症状が悪化する可能性はもとより、大きな病気(大腸がんなど)を見過ごす可能性もあります。
症状が気になる方は、早めに肛門科・大腸肛門科を受診する様にしてください。
平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在、平田肛門科医院の4代目院長。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 名誉院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の名誉院長。