裂肛[れっこう](切れ痔・裂け痔)

裂肛の手術

保存療法でも症状が改善しないばかりか、患部が潰瘍化して肛門が狭くなり、排便時の苦通が強くなるような場合は、手術が必要になることもあります。

保存療法で治るかどうか様子を見てから手術

前述したように、初期の段階のものは、生活指導や薬物療法など、なるべく肛門に負担をかけず、症状をやわらげる保存療法を行います。早めに保存療法を行うことで、大部分が治ります。

しかし、裂肛が慢性化し、肛門上皮が傷ついては治るという状態を何度もくり返していると、患部が潰瘍化して肛門が狭くなるために、排便時の苦通が増やします。このような場合は、肛門の狭さとかたさを取り除き、元の柔軟な肛門の状態に戻すための手術が行われます。

裂肛の手術には、スライディング・スキン・グラフト法(SSG法・皮膚弁移行術)と内肛門括約筋側方切開術(LSIS)の2つがあります。

スライディング・スキン・グラフト法

慢性化し、傷口が潰瘍化した裂肛の場合に行われるのが、スライディング・スキン・グラフト法(皮膚弁移行術)です。潰瘍化した傷口をメスで切除し、その部分に正常な肛門皮膚をスライドさせて裂肛の傷あとをおおってしまう手術法です。

まず、腰から下に麻酔をかけ、器具(肛門開創器)で肛門を広げて、肛門の後方を歯状線から肛門緑手前まで縦方向に約2~3cm切開します。内肛門括約筋が露出する深さまで切開しますが、内肛門括約筋までは達しません。縦方法の切開部分は横に縫合します。これによって肛門管が拡張します。縫合した糸をペアンという器具で引っぱりながら、縫合線の皮膚側を弧状に切開すると、肛門管側の皮膚が肛門管内に移行していきます。

傷あとがすぐに皮膚でおおわれてしまいますし、内肛門括約筋に傷がついていないので、痛みや内肛門括約筋のけいれんの心配もありません。また、治るときに肛門が狭くなることもありません。このスライディング・スキン・グラフト法は、7~10日の入院で行うことができます。

ただ、長期間にわたって裂肛をくり返した結果として肛門狭窄が起こっているので、この手術で症状が改善されても、健康な人にくらべれば、肛門は狭いのが普通です。便秘にならないよう、スムーズに排便できるよう生活改善をつづけないと、再度、肛門が狭窄することがあります。

内肛門括約筋側方切開術

裂肛が治りにくいのは、内肛門括約筋がけいれんするために、肛門がいつもぎゅっと閉まっているからである、という見解にもとづいてイギリスで開発された手術で、別名(LSIS)と呼ばれています。これは、内肛門括約筋だけを肛門の側方で切開し、けいれんをとって治す方法で、肛門内圧静止圧が高く、内肛門括約筋が過度に緊張していると考えられる場合に行われます。

ベテランの医師が行えば、それほど困難な手術ではないため、日本でも多くの病院で行われていますが、もっとも大切なことは、内肛門括約筋の切開を必要最小限に抑えるということです。切りすぎてしまった場合、元に戻すことはできません。患者さんの20年後、30年後の人生を考慮して行うべき手術であるといえます。

この手術は、随意筋の緊張を取り除いて内肛門括約筋を正確に確認するため、腰椎麻酔下で行う必要があります。

平田病院では4~5日入院して行います。

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