痔は切らずに治す

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痔の原因

男と女、どちらが痔になりやすい?

男性と女性は、体の構造や生理機能に異なるところがあるために、それぞれに特有の病気や、症状のあらわれ方があります。便秘しやすい女性に多い痔は裂肛で、男性に多いのは痔瘻です。

便秘しやすい女性に痔が多い?

痔は、男性に多い病気というイメージがありますが、実際は女性のほうが多いのかもしれません。というのは、女性には、自分が痔であることを公言する人が少ないことから「隠れ痔主」が圧倒的に多いと見られるからです。

女性が痔になりやすい要因として、妊娠・出産という女性特有の大きな事業があることと、痔の最大の原因である便秘症が女性によく見られることがあげられます。

もともと女性は、男性より便秘しやすい生活環境にあります。というのは、女性は仕事中や外出中に便意をもよおしても、がまんしがちですし、太りすぎを気にしてダイエットすることが多いので、食事の量が減って便秘になりやすくなります。また、生理前には、ホルモンの作用で腸の働きが鈍くなるので、腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱くなって便秘になりがちです。

便秘症になった女性がかたい便をいきんで無理に出そうとして、裂肛になるケースも多いのです。それまで何ともなくても、妊娠・出産後に痔になってしまう人も多勢います。妊娠中は、大きくなった子宮が直腸を圧迫するために、肛門や直腸周辺に集中している細かい静脈がうっ血し、痔になりやすくなります。分娩のときにいきむので腹圧によって肛門が脱出し、痔になることもあります。

また、出産後には、腹筋がゆるむので腸が弛緩したり、母乳をあたえるために水分が不足して便がかたくなるので、排便のときに肛門が傷つき、痔を発症しやすくなります。

現在、平田病院を受診する患者さんの約70%は、女性です。

痔瘻だけ男性が優勢

痔の中でも痔瘻だけは男性に多いのが特徴です。しかも、筋肉の発達した、がっちりした体格の青年や壮年男性に多く見られます。

痔瘻は、歯状線にある肛門腺窩というくぼみに便が入り込んで細菌感染する病気です。もともと肛門は、細菌の感染には強い免疫力があるので、炎症を起こすことは少ないのですが、過労などで免疫力が低下しているときに、下痢状の便などが勢いよく肛門腺窩にぶつかると傷がついて細菌感染し、肛門周囲膿瘍という病気を起こすことがあります。痔瘻の多くは、この肛門周囲膿瘍が深く進行したものです。

一般的に、女性より男性のほうが下痢になりやすく、また、排便のときに便が肛門腺窩にあたる力が強いことから、痔瘻は男性に多く見られるのです。

【COLUMN】
ハース博士の内痔核発生理論

ハース博士は、内痔核が、

①粘膜あるいは肛門上皮などの上皮成分
②血管の支持組織である平滑筋やコラーゲンなどの結合組織
③痔核組織を内肛門括約筋、あるいは連合縦走筋に滑脱しないようにつなぎ止めている連合組織

の3つの部分からなり、②と③が破壊されると内痔核を発生させる、と主張しました(1984年)。

近年は③の部分が弱くなって痔核が脱出してしまうという考え方が主流になり、③の修復をはかる治療法が検討されています。しかし、私たちが行った内痔核微小構造の研究では、②の破壊は③と同様か、それ以上に激しいもので、③だけの修復では内痔核を根治できないという考えています。