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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#002 「痔の種類」

そもそも「痔」って何?

実は、“痔”という病気は存在しません。痔とは、肛門の病気の総称であり、細かく言えば100種を超える症状が存在します。その中でも”痔の御三家”と言われるほどメジャーな病態である「痔核」「切れ痔」「痔ろう」について解説します。

痔核(いぼ痔)とは

一つ目は、痔核(いぼ痔)です。これは、内痔核と外痔核に分かれます。肛門の中に静脈瘤と呼ばれる血管の固まりが出来ることで発症し、内痔核の場合は神経のないところにできるので、痛みはないが出血や排便時に脱出したりします。外痔核は神経のある浅いところにできるため、強い痛みを伴います。実はこの「内痔核」を8割の人が持っているものですが、90%以上のケースで手術不要で、生活習慣の見直しで治癒が可能、もしくは共存が可能なほど小さくすることができます。

切れ痔(裂肛)とは

ふたつめは「切れ痔」(裂肛)です。肛門内の神経のある浅いところが切れることで、排便時に痛みを伴います。硬い便のせいで切れる場合が多いのですが、実はこちらも手術が必要ないことがほとんどです(手術が必要なケースは5%以下)。ただし、何度も切れてしまうと、傷口が塞がれる過程で粘膜がひきつれてしまうため、肛門が狭くなり、便が出にくくなるなどの症状が現れます。この場合は、症状によっては皮膚移植を行う等して肛門を広くする手術を行うこともありますが、当院では18%程度ですので、こちらもやはり生活習慣を正すことで8割以上の方が改善可能です。

痔ろう(穴痔)とは

みっつめは「痔ろう」(穴痔)です。肛門内の炎症が外に広がり、肛門内と皮膚に穴が開き、バイパスができてしまう症状です。このバイパスから膿や便が出てしまうこともあり、こうなってしまうと100%入院して手術となります。
ただ、ここで問題となるのは、「本当に痔ろうなのか?」ということです。他の病院から、「痔ろう」の診断で紹介状をもらいますが、そのうち何人かは痔ろうではないケースがあります。世界的な常識では、「誰が見ても痔ろうである」と判断できた場合のみ、手術を行います。少しでも疑わしい、他の可能性がある場合には、経過観察を行い、慎重に対処します。

痔の治療の基本は「正しい診断」と「セルフケア」

肛門内の炎症がすべての痔の原因になり、悪化させる要因ともなるので、自己治癒力を高め、まずはきちんとセルフケアを行うことが大切だと考えています。そのためにも、少しでもおかしいと感じたら、お近くの専門医に相談し、正確な診断をしてもらう。そのうえで、今までの生活習慣を見直し、それ以上悪化させないように過ごす。3か月経っても改善しないようであれば、その段階で初めて手術という選択肢が出てくるのが、痔との正しい付き合い方です。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。