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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#047「下痢は痔に悪い?」

痔になると排便が負担になりがちですが、特に下痢の時は痛みとの戦いになることが多いです。事実、下痢は痔に悪影響を及ぼします。今回は痔と下痢の関係性や改善の方法についてお話しします。

下痢が痔に悪影響を与える2つの理由

下痢が痔に悪い理由には大きく分けて以下の2つがあります。

  • 頻便になり肛門に負担がかかる
  • 水様便が肛門で吸収されて炎症を起こしてしまう

1つ目の理由は頻便になることで肛門に負担がかかるためです。下痢になると排便の回数が多くなり1日に何度もトイレに行くことになります。そもそも肛門は1日1回使用される設計です。 1日に何度も排便をすると、1日中起動していた全自動掃除機がすぐに壊れてしまうように、肛門に大きな負担がかかって痔が悪化してしまいます。
2つ目は下痢が肛門の粘膜に吸収されやすいことが原因です。水様便は普段の便と比べて肛門の粘膜で吸収されやすくなっています。当然、水様便には雑菌が多く含まれているので、粘膜に悪影響を及ぼし、結果的に炎症を引き起こしてしまうのです。
以上の理由から、下痢が頻発すると痔に悪影響を与えてしまいます。よって、下痢になりがちな人が痔を改善したいのであれば、まずは下痢を直して便を正常にすることが重要です。

痔の改善につながる下痢を解消方法を紹介

下痢が痔に悪影響を与えていることが分かったところで、下痢の解消方法について知っていきましょう。下痢の原因には大きく分けて病気と生活習慣の乱れが考えられます。病気の場合はすぐに医師の診察を受け、原因の特定と治療をしましょう。 病気の自覚がないとしても、生活習慣に問題がない状況で下痢が続くようなのであれば何かしらの病気が原因になっている可能性が高いです。不安があれば先延ばしにせず、早めに医師の診察を受けるべきでしょう。

下痢の時は腸に負担をかけないようにしよう

下痢の原因が病気ではない場合は、生活習慣の乱れが原因である可能性が高いです。原因として特に多いのが食生活の乱れになります。基本的に排便は自律神経の反射をきっかけにして行われます。しかし、乱れた食生活で腸が過敏になっていると、自律神経が刺激され、頻繁に排便が行われてしまうのです。 よって、下痢になりがちなのであれば食生活を見直すと予防できる可能性があります。基本的に下痢に良い食べ物は痔に良い食べ物と共通点が多いので、詳しくは『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』をご覧ください。
また、下痢の症状が出ている時はおかゆや湯豆腐など、腸への負担が少ない食事を選びましょう。腸に負担をかけない生活を心がければ、早期の改善が見られる可能性が高いです。

食事のタイミングにも注意しよう

下痢になりがちな人は食事のタイミングにも注意しましょう。特に重要なのは夕食です。現代は働く時間が多様化した影響もあり、夕食の時間がどうしても遅くなってしまう人も少なくないでしょう。 しかし、就寝前2時間以内に食事を摂ってしまうと自律神経が乱れてしまうため、下痢の原因になります。とある国際弁護士の事務所では、社員の多くが痔に悩まされていました。原因を調査をしてみると、社員が全員夜遅くに夕食を摂っていたため、下痢になりがちだったことが分かったのです。
そこで、午後7時ごろに軽食をとり、夕食は湯豆腐やおかゆにすることで、寝る前に腸への負担をかけないよう対策をしました。結果、痔と下痢に悩まされていた社員は全員下痢が解消。痔の出血もなくなりました。
上位の例からも分かるように、就寝前に食事を取らざるを得ない状況なのであれば、早めに胃に食べ物を入れておいて、夕食は軽いものにするのがおすすめです。

夜更かしと飲酒は下痢の原因

夜更かしや飲酒も下痢の原因です。夜更かしをすると自律神経が乱れ、下痢になりやすくなります。加えて、睡眠時間が少なくなることでさらに自律神経が乱れ、下痢が悪化してしまう可能性が高いです。 飲酒も睡眠が浅くなり自律神経が乱れることから、下痢に繋がります。また、飲酒すると膵臓が刺激されて膵液が分泌され、腸に負担がかかるため、下痢が悪化しやすいです。下痢になりがちな人や痔の悪化を防ぎたい人は早寝早起きを心がけ、お酒は控えるようにしましょう。

下痢が続く場合は分食をするのがおすすめ

下痢が続く場合は分食をするのも有効な手段になります。分食とは普段3食摂っている食事を5食に分けることで、1回の食事で摂取する食事量を減らすことです。基本的に、胃に食事が入ると胃結腸反射という反射が起こり、腸が動いて排便を促されます。 1回の食事量を減らすと胃結腸反射でおこる腸の運動が少なくなるので、排便の回数が減り、結果的に下痢の解消に繋がるのです。1日5食食べることは非常に手間がかかりますが、下痢が長期にわたって続くのであれば、食事回数を増やすことも検討しましょう。

痔の悪化を防ぐためにも下痢になる原因を理解しよう

下痢になると肛門の酷使や炎症の誘発によって痔に悪影響を与えます。痔持ちで下痢になりがちな人は、下痢になる原因をしっかりと理解し、予防していくことが重要です。下痢は基本的に生活習慣の乱れや飲酒が原因になります。下痢になりがちな人は食事の時間や量に気を使い、早寝早起きを心がけましょう。 また、病気が原因で下痢になっていることもあります。生活習慣に問題がないにも関わらず下痢が続くようであれば、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。病気を早急に治療すれば、結果的に痔の改善にも繋がるでしょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。