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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#149「その症状って… 脱肛?直腸脱?〜正しい病名と治療法」

今回は、当院のYouTube番組「おしりの医学」に寄せられたご質問にお答えいたします。

ご質問内容:
子供の頃から、肛門から腸のようなものが出てきます。
母から「脱肛でしょ?大丈夫よ」と言われて来ました。
でも腸みたいです。
おへそから手術してくれるお医者さんはいますか?

脱肛と直腸脱は全く別物!〜正しい見分け方

「おしりから何か出てくる…」といった症状で悩む人は意外と多いのですが、実は脱肛と直腸脱は原因も治療方法も全く違います。
放置すると悪化しやすいので、専門医の診断が必須です。

脱肛:主にいぼ痔(内痔核)が肛門の外に飛び出すもの。
排便後に自然に戻ったり、手で押し込めば戻ることが多く、見た目はイボ状や部分的な腫れ。

直腸脱:直腸そのもの(腸の壁全体)が反転して肛門から飛び出る病気。
円筒状・輪状の溝が見え、腸のような赤い粘膜が長く(数cm〜10cm以上)出てくる。
いぼ痔がないのに「腸みたいなのが出る」のが典型的な特徴です。

直腸脱の主な症状

・排便時やいきんだ時に肛門から腸が飛び出す
・飛び出したものが自然に戻りにくい(進行すると手で押し込まないとダメ)
・便漏れ・粘液汚れ・残便感・下腹部の違和感
・進行すると歩行中や安静時にも脱出

基本的には高齢女性に多いのですが、子供の頃から症状がある人は、腸を支える組織が元々弱い、といったケースが考えられます。

診断のコツ〜「脱出時の写真」

診察時に脱出していないと診断が難しく、脱出時の写真は最も有力な助けになります。
肛門科の専門医なら、写真を見ただけで診断がつくことがほとんどです。

スマホで正面・横から数枚撮るだけで大丈夫です。
(恥ずかしいですが、これで長さが大体わかります)
写真があれば話がスムーズに進み、脱出長(5cm以上か以内か)の状況から治療方針も決めやすいです。

「直腸脱だと思って専門施設に行ったら、実は脱肛だった」といったケースも多いので、まずは信頼できる肛門科で正しい診断をしてもらってください。

治療の基本〜ほとんどが手術

直腸脱は薬や生活改善だけでは治りにくいため、手術が基本です。

以下の通り、脱出の長さで術式が変わるのがポイントです。

5cm以内:
肛門側から行う経肛門手術(Gant-Miwa手術、デロルメ法など)が可能。
負担は少ないですが、再発率が高め(10〜30%程度の報告あり)と言われています。

5cm以上:
お腹側から行う腹腔鏡手術がおすすめです。
全身麻酔で、直腸を吊り上げ、仙骨に固定(メッシュ使用の場合も)します。
小さな傷で済み、入院も短めです。

今は手術が進歩しており、再発率も低く抑えられるようになっています。
子供の頃からのケースでも、適切な手術で普通の生活に戻れますよ。

腹腔鏡で再発率を抑える最新アプローチ

特に脱出が大きい場合(5cm以上)には、「腹腔鏡下直腸固定術」という術式が主流です。

お腹に数カ所の小さな穴を開け、内視鏡で直腸を上方に引き上げ固定します。
再発率は8%以下と低く(経肛門手術より格段に優位な報告多数)、術後の痛みや違和感も少なく、回復も早いです。

全身麻酔(麻酔科医)が必要なので、大学病院や総合病院レベルの施設で行います。
「直腸脱 腹腔鏡」で検索すると、専門施設が出てきます。
(もちろん当院でもご紹介できます)

まとめ

「おしりから腸みたいなのが出る」は、直腸脱のサインかも。
脱肛とは別物で、手術でしっかり治せます。

今の腹腔鏡手術は体への負担が少なく、再発も抑えやすいです。
恥ずかしい気持ちはわかりますが、一歩踏み出せばQOLが大きく上がりますよ!

「直腸脱かも?」と思ったら、まずは肛門科専門のクリニックで診てもらいましょう。
心配し過ぎず、とにかく早めに診てもらってください。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在、平田肛門科医院の4代目院長。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 名誉院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の名誉院長。

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