Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#152「おしりがかゆい原因は?〜正しいおしりのケア方法」
「肛門にかゆみと少量の便漏れがあります。自己流で対処していますが、どんな病名でしょうか?」
という視聴者さまからのご質問にお答えします。
おしり(肛門)の痒みは、日常生活に大きなストレスを与えます。
特に「痒い→掻く→悪化」の悪循環に陥りやすく、放置すると慢性化してしまうケースも少なくありません。
おしりがかゆくなる主な原因〜「肛囲掻痒症(こういそうようしょう)」とは
「肛囲掻痒症」とは、肛門周囲に強い痒みが生じる症状の総称です。
特に60代以降に相談が増える傾向にあり、痒みだけでなく「便が少し漏れる」「濡れた感じがする」といった症状を伴うケースも多く見られます。
痒みの原因は多岐にわたりますが、皮膚のバリア機能が低下しているケースが多く、そこにさまざまな刺激が加わることで症状が慢性化します。
最も多い悪化要因① 〜石鹸でゴシゴシ洗ってしまう
多くの人がやってしまいがちなのが、痒いからといって石鹸で強く洗うことです。
皮膚は本来弱酸性ですが、石鹸はアルカリ性。ゴシゴシ洗うと物理的・化学的に皮膚バリアが破壊されてしまいます。
バリアが壊れる → より痒くなる → さらに洗う…という悪循環となってしまいます。
正解は「手と水だけで洗う」ことです。
おしりは感染に対する抵抗力が比較的強い部位です。よほど汚れが気になる場合を除き、石鹸は基本的に不要です。
どうしても洗いたい場合には、弱酸性のベビーシャンプーなどを薄めて使う程度に留めると良いでしょう。
最も多い悪化要因②〜ウォシュレットの使い過ぎ
ウォシュレットも強い水圧・長時間の使用はNG(逆効果)です。
例えば、強モードで1分以上当ててしまうと、物理的に皮膚は傷つけられ、結果、皮膚がただれてさらに痒くなってしまいます。
<推奨の使い方>
・ 弱モードで10秒程度
・優しく当てる
・使い終わった後は軽く拭くか自然乾燥
(ごしごし拭いてはいけません)
便漏れ・濡れた感じがする場合
今回の事例のように、「肛門が濡れた感じがする」「少量の便漏れがある」場合には、いぼ痔(内痔核)や切れ痔が背景にある可能性があります。
痔から出る粘液(サイトカインなど)が肛門のしわに残り、塩分などの刺激物となって痒みを引き起こしている可能性が少なくありません。
また痒みだけでなく便漏れの症状がある場合は、早めに専門医(肛門科)を受診することをおすすめします。
ステロイド(フルコートなど)の正しい使い方と注意点
ステロイド軟膏は即効性が高く、強い痒みに効果的ですが、漫然と長期間使うのは危険です。
<問題点>
・皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
・神経終末が皮膚表面に近づき、少しの刺激で痒みを感じやすくなる
・結果として慢性肛囲掻痒症がさらに悪化する
<適切な使い方>
・強い症状のときだけ1週間程度を目安に使用する
・自己判断で長期使用せず、医師の指示に従う
今日からできる正しいおしりのケア
・石鹸は極力使わない(手と水だけでOK)
・ウォシュレットは弱・短時間
・お風呂上がりは軽く保湿(乾燥が気になる場合)
・下着は通気性の良いものを選ぶ
・便秘・下痢を改善する(食生活の見直し)
痒みが出たときの対処法
・掻かないことが最重要です。
→患部を傷つけない様に、爪は短く切っておきましょう。
・痒みが出たら冷やす
→保冷剤(アイスノン)で冷やすと効果的です。
冷やすことで痒みの神経を一時的に抑える効果が期待できる
まとめ
おしりの痒みは「洗いすぎ」「刺激の与えすぎ」によって悪化することが非常に多い症状です。
特に石鹸と強いウォシュレットは避け、優しく丁寧にケアすることが改善の近道となります。
症状が長引く場合や便漏れを伴う場合は、自己判断せず、肛門科や皮膚科を受診する様にしてください。
平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在、平田肛門科医院の4代目院長。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 名誉院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の名誉院長。