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おしりの医学#102「『鉄分の過剰摂取の危険性』〜今日から始める生活改善~」

健康的な生活を送るためには必要不可欠な栄養素である鉄分ですが、過剰に摂取すると老化や疾患の原因になります。特に女性は月経の有無で鉄分の推奨摂取量が変わるので、食事でうまくコントロールすることが重要です。今回は鉄分の推奨量や過剰摂取の危険性について解説します。

鉄分の欠乏は女性の方が多い

鉄分は体内で酸素の運搬を担っており、適切な量を摂取することで、疲れにくくなったり、貧血を予防することができます。厚生労働省が公表している鉄分の1日当たりの推奨量は以下の通りです。

  • 成人男性:7.0~7.5mg
  • 成人女性:6.0~6.5mg
  • 成人女性(月経あり):10.5~11.0mg

上記からも分かるように、通常は成人女性よりも成人男性の方が鉄分の推奨量が多いですが、月経時には成人女性の方が多くなります。成人女性は月経時には鉄分の推奨量が約1.6倍になるため、普段意識して鉄分を摂っていても、推奨量に届かないことが少なくありません。
結果として、成人男性では鉄欠乏の人はほとんどいないのに対し、成人女性は鉄が欠乏する人が多いです。事実、成人女性には隠れ貧血の人が2割程度存在すると言われています。しかし、鉄はフリーラジカルという反応性の高い物質になりやすく、酸素と結びつきやすいので、過剰に摂取すると身体が酸化ストレスにさらされ、老化の原因になることも多いです。
よって、月経の有無で鉄分の推奨量が変化する成人女性は、身体の状態に合わせて摂取する鉄分をコントロールする必要があります。

鉄分は細菌の増殖にかかせないもの

人体にとって欠かせない鉄分は、細菌にとっても欠かせないものとなっています。鉄分は細菌が増殖する際に必要であり、鉄分が多い環境では細菌が増殖しやすくなります。生体内にも食べ物などと共に取り込んだ細菌が存在していますが、平常時はへプシジンというタンパク質の働きで鉄を取り込み、細菌に渡さないようにしているため、特に問題はありません。
しかし、鉄分を過剰に摂取すると、ヘプシジンで鉄分を取り込み切れないため、細菌が増殖しやすくなってしまいます。結果的に炎症や疾患の原因となるので注意が必要です。また、鉄の過剰摂取は鉄沈着症や便秘なども引き起こします。健康維持のために必要な鉄分ですが、過剰に摂取しないよう、うまく調整することが重要です。

ひじきには鉄分が含まれていない

鉄分が多い食材としては、レバーや赤身肉、煮干しなどが挙げられます。鉄分が多い食材としてひじきが挙げられることが多いですが、実はひじき自体に鉄分は含まれていません。古くからひじきが鉄分を含んでいると言われていたのは、ひじきを茹でる際に鉄鍋を利用していたためです。
鉄鍋を利用すると、調理中に鉄イオンが遊離し、料理に鉄分が含まれます。昔はひじきを茹でる際に鉄鍋を利用していたので、鉄分を多く含む食材として挙げられることが多かったのです。
しかし、近年はひじきを茹でる際にステンレス鍋を利用することが主流となってきているため、鉄分が含まれているひじきはほとんど販売されていません。鉄分を効果的に摂取したいのであれば、鉄鍋で茹でられたひじきを購入するか、他の食材を検討しましょう。
鉄鍋によって鉄分が含まれるようになるのはひじきだけではありません。普段の調理に鉄鍋を利用すれば、料理から効率的に鉄分を摂取できるようになります。ただし、鉄分量を正確にコントロールできるわけではないので、鉄分の摂取が過剰にならないように注意が必要です。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。