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おしりの医学#033「肛門の痛みの原因は?」

肛門の痛みといえば切れ痔に代表されるような排便時の痛みを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、中には排便時に痛みは感じず、日常生活を送っている中で鈍い痛みを感じるものも存在します。今回は肛門の痛みの中でも特に鈍い痛みを感じるものについて、原因や治療法などを解説していきます。

肛門痛とは

肛門痛は肛門付近で感じる痛み全般を指す言葉です。肛門痛には大きく分けると以下のような病状のものがあります。

  • 排便時に痛みを感じ出血を伴うもの
  • 出血はないが排便時以外に鈍痛を感じるもの

上記のように病状の幅が広いのは、痛みを引き起こす原因となっている病気が異なるためです。特に排便時以外に鈍痛を感じるものについては、様々な原因が考えられるため、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

鈍い痛みの肛門痛の病状

鈍い痛みの肛門痛には以下のような症状が見られます。

  • 排便時には痛みや出血がない
  • 裂肛などとは違う鈍い痛みを感じる
  • 起床してから時間が経つと痛くなる
  • 長く立ったり座ったりしていると痛みだす
  • 睡眠中は痛みがない

排便時に痛みや出血を伴うような肛門痛と大きく異なるのは、起床してからしばらくすると痛み始めることです。例えば午前中にした場合は夕方くらいから痛み始め、だんだんと痛みが強くなっていきます。
また、長く立ったり座ったりしているとさらに痛みを感じやすくなるのも特徴です。

鈍い痛みの肛門痛の原因

排便時に痛くない肛門痛の原因として考えられるのが、直腸粘膜脱の悪化です。直腸粘膜脱とは、直腸を支えている組織が弱くなり、粘膜が肛門に下がっていく病気のことです。
詳しくは『おしりの医学#032「直腸粘膜脱について」』をご覧ください。
直腸粘膜脱になると、下がってきた粘膜が陰部神経という神経が刺激し、痛みを生じることがあります。もともと神経痛などがあった場合は、なおさら痛みを感じやすいです。
また、内痔核があると肛門痛が悪化しやすくなります。内痔核に血が溜まって鬱血すると、内痔核による腫れが大きくなり、直腸の粘膜を引っ張ってしまいます。
鈍い痛みの肛門痛を感じることがある場合は、まずは直腸粘膜脱を疑ってみましょう。

鈍い痛みの肛門痛には昼寝が有効

肛門に炎症が見られる場合は薬治療なども行いますが、鈍い痛みの肛門痛を抑える上で最も有効なのは昼寝です。先述の通り、鈍い痛みの肛門痛は起床してからしばらく経つと痛みを感じ、特に長時間立ったり座ったりしていると痛みを感じやすくなります。
起きていると徐々に痛みを感じるようになるのは、直立姿勢や座位だと直腸粘膜が徐々に肛門に向かって下がってくるためです。昼寝をすれば、直腸粘膜を正常な位置にリセットできます。
昼寝をする際にはベットなどに倒れ込み、心臓と直腸が同じ高さになるようにするのがポイントです。リクライニングチェアのように座位に近い体勢だと効果がないので注意しましょう。

肛門痛がある時は少し休むことも考えよう

肛門に鈍い痛みがある場合、直腸粘膜脱や陰部神経の炎症、内痔核といった病気が発症している場合があります。日ごろから肛門の鈍痛に悩んでいる方は、昼寝の時間を設けることである程度症状を緩和することが可能です。根本的な改善を目指したいのであれば、医師の診察を受けることをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。