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おしりの医学#079「排便後にどんどん肛門が痛くなるのはなぜ?」

痔の症状がある時、排便時ではなく排便してからしばらくしてから痛みを感じることがあります。排便後にズキズキとした痛みが続く場合、切れ痔(裂肛)が悪化している可能性が高いです。今回は切れ痔が原因の排便後の痛みと、症状の治療方法について解説します。

排便後の時間差の痛みは急性裂肛が原因

排便時は痛みがないにも関わらず、排便後に徐々に痛みが出てくるのは、急性裂肛が原因であることが多いです。包丁で指を切ってしまった時を想像すれば分かりますが、切り傷は傷ができた瞬間よりも、傷ができてから少し経ってからの方が痛みを感じます。
特に傷口が深い場合はズキズキとした痛みが長時間続くことが多いため、急性裂肛になった時も同じように、傷ができてからしばらくたってから痛み出すのです。
肛門の皮膚部分(肛門上皮)はからだの中でも皮膚が弱い部分なので、硬い便が通過した時などに切れ痔になってしまうことは珍しくありません。一度できた切れ痔は治りかけの段階で再度切れてしまうことが多く、何度も切れることでだんだんと深い傷になります。
症状が悪化すると傷が筋肉に達してしまうこともあり、長期にわたって痛みが引かなくなってしまいます。最終的には潰瘍になってしまう可能性もあるので、可能であれば早期に治療を行うことが重要です。

裂肛の治療で重要なのは生活習慣の改善

切れ痔は生活習慣病なので、生活習慣の改善をしていくことで保存療法的に治療していくことが可能です。重要なのは食事と運動です。まずはしっかりと食物繊維を摂取し、番が硬くない状態を維持することが重要になります。
また、ウォーキングなどの適度な運動やストレッチを行うことで、便意が起こりやすくなり、いきむことなく排便することが可能です。
加えて、切れ痔の場合は座薬の使用がおすすめになります。切れ痔の場合、一度傷が治ればある程度硬い便が通っても切れづらくなるので、可能な限り早く傷を治すことが重要です。座薬や軟膏よりも患部に届きやすく、より早期での効果が期待できるので、生活習慣の改善と合わせて使用すると良いでしょう。
切れ痔が悪化して痛みが残るようになる前に、専門医の診察を受け、適切な治療を行いましょう。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。