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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#090「生活習慣の改善とは?具体的に何をすればいいのですか?」

前回に引き続き、今回もライブ配信第2回にいただいた質問についてお話しします。「ジュの治療には生活習慣の改善が重要ということですが、具体的には何をすればいいのでしょうか」という質問をいただきました。一口に生活習慣の改善といっても、その方法は様々です。今回は痔の治療のために必要な生活習慣の改善方法について、代表的な5つの方法を紹介していきます。

生活習慣の改善方法①:食物繊維を摂取する

まず最も重要なのが、食物繊維の摂取です。食物繊維を摂ることは腸内環境の改善に繋がり、便の状態が正常になりやすくなります。便が正常になると排便の際にいきむ必要が無くなるため、肛門に負担がかからず、結果的に痔の症状の改善に繋がるので、まずは毎日の食事で食物繊維をしっかりと摂ることが重要です。
日本人は食物繊維の推奨摂取量が20gと言われています。しかし、実際には20g摂取できている人は少なく、食物繊維を意識して摂取している人でも14g程度しか摂れていないようです。痔の治療のために食物繊維を意識的に摂取するのであれば、医師の指導のもと、綿密に献立を考えていくのが重要です。食物繊維が多く含まれる食材については『おしりの医学#082「今知って欲しい腸活の常識(痔の改善)」』詳しく解説しているので、是非併せてご覧ください。

生活習慣の改善方法②:横になる時間を十分に設ける

次に重要なのは横になる時間を十分に設けることです。特に内痔核がある場合は、1日の中で横になる時間を十分にとることが重要になります。そもそも人間は進化前は4足歩行であり、心臓と肛門が同じ高さにありました。しかし、進化の過程で2足歩行となり、現在は心臓よりも肛門が低くなっています。結果、重力の影響で肛門付近に血が溜まりやすくなり、内痔核ができやすくなっているのです。事実、犬や猫などの4足歩行の哺乳類では、内痔核ができることはほとんどありません。
よって、痔の症状を軽減するためには、1日の中で横になる時間を設け、心臓と肛門の位置を同じにすることが重要です。睡眠が十分摂れていれば問題ありませんが、睡眠時間が少なくても、横になる時間が設けられていれば症状の軽減が期待できます。横になる時間は合計で7時間程度あれば十分です。基本的には睡眠をしっかりと摂るように心がけ、睡眠時間が短くなりがちな時も、意識的に湯おこになる時間を設けるようにしましょう。

生活習慣の改善方法③:座りっぱなしを避ける

座りっぱなしを避けることも、痔の改善には重要です。座位は特に肛門付近に身体の重さがかかる体勢なので、据わる時間が多いと痔の悪化に繋がります。日本人は世界で最も据わっていることが多い民族と言われており、当然肛門への負担も大きいです。
痔の症状を改善したいのであれば、長時間座りっぱなしの状況は可能な限り避けましょう。仕事の関係で座りっぱなしの状態が続くのであれば、1時間に1回は立ち上がり、10m程度でも良いので部屋の中を歩くなど、軽く身体を動かすことが重要です。

生活習慣の改善④:トイレに長居しない

続いてはトイレに長居しないことです。下痢や便秘といった症状が続くと、どうしても排便時にトイレにいる時間が長くなります。しかし、便座に座り続けるのは一般的な椅子に座っている時以上に肛門に負担がかかるため、長時間座り続けるのはおすすめできません。
便座に座る時間は可能であれば3分以内、長くても5分以内にしましょう。便秘の影響で排便に時間がかかる場合は、長時間トイレでいきむのではなく、一度排便を切り上げて、便意が現れたタイミングで再度トイレに行くのがおすすめです。また、水を飲んだり軽い運動すると便意が促進されるので、便意がない時は試して見ましょう。

生活習慣の改善⑤:湯船に浸かる

湯船に浸かって身体を温めるのも有効な手段です。身体が温まれば、筋肉が一時的に弛緩し、肛門も緩みやすくなります。結果、肛門に負担をかけずに排便することが可能です。痔の治療の効果を上げたいのであれば、忙しくても可能な限り時間を作り湯船に浸かって身体を温めるようにしましょう。
他にも食物繊維とともに腸内細菌の餌になるオリゴ糖の摂取や、腸内細菌自体を増やすサプリメントの摂取など、様々な方法があります。生活習慣の改善による痔の治療を考えている方は、まずは専門医の診察を受け、生活指導を受けるのがおすすめです。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。