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おしりの医学#092「診察では、まず「全結腸内視鏡検査」を受けるのでしょうか?」

前回に引き続き、今回もライブ配信第2回にいただいた質問についてお話しします。「平田肛門科医院で診察を受ける場合、まずは全結腸内視鏡検査を受けるのでしょうか。2年前に診察を受けた際は、S字結腸に憩室があると診断されました」という質問をいただきました。そこで今回は、「結腸内視鏡検査」の必要性について解説します。

「全結腸内視鏡検査」の受診は必須ではない

結論としては、当院で診察を受ける際には「全結腸内視鏡検査」の受診は必須ではありません。「全結腸内視鏡検査」とは、肛門から大腸を経由し、盲腸に至るまでの部分を内視鏡で診察する検査です。肛門から太さ11〜12mm程度の内視鏡を挿入し、肛門や腸の状態を確認していきます。
肛門の疾患と大腸の疾患には直接的に関係があるわけではないため、痔の診察を受けるだけなら「全結腸内視鏡検査」の受診は不要です。しかし、肛門の診察をしたからと言って大腸の疾患まで分かるということはありません。特に大腸がんについては早期で見つけないと取り返しのつかないことになるので、症状の原因が分かっていないのであれば、大腸まで内視鏡で検査することを検討しても良いでしょう。

大腸がんはがんの中でも死亡率が高い

大腸がんは癌の中でも特に死亡率が高い病気となっています。死亡率が高い理由は検診率の低さです。大腸がんは他のがんと異なり、一般的な検査では発見することが難しくなっています。結果、早期の発見が出来ず、死亡率の高さに繋がってしまうのです。
現在、大腸がんの治療法自体は確立されてきており、腹腔鏡を用いたロボット手術なども普及してきています。そのため、入院期間も短く、小さな傷跡で治療を済ませることが可能です。しかし、以下に治療方法が確立してきても、検診率が低い状況を変えなければ死亡率の低下に繋げることができません。
大腸がんは成長が遅く、一度検診すれば数年間は検診の必要がありません。よって、肛門の診察に併せて検査を行う価値は十分にあります。来院する機会も減らすことができるので、もし気になるのであれば、診察と同時に「全結腸内視鏡検査」を受けるのがおすすめです。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。